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公認会計士試験合格体験記~2.財務会計論の勉強法~

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当記事では、公認会計士試験の財務会計論の勉強法について書いていきます。あくまで2011年合格者の一例として捉えていただければと思います。

全体的な勉強法については、公認会計士試験合格体験記の総論の記事をご覧ください。

公認会計士試験合格体験記~1.総論~公認会計士試験の合格体験記を書いていきます。これから公認会計士を志す方のための一助となれば幸いです。 当記事は総論的な扱いです。科...

財務会計論の科目概要

財務会計論は短答試験では200点/500点、論文試験では200点/700点を占める科目であり、配点が最も大きい科目となっています。また、試験範囲が非常に広く、多くの勉強時間を取られる科目です。

財務会計論は計算(簿記)と理論(財表)があり、本試験ではミックスされて出題されます。計算と理論の出題比率は年によって異なります。

財務会計論の科目特性

科目ごとの特性を知っておきましょう。

計算(簿記)

非常にボリュームが多いため、合格水準に達するまで長い時間を要します。予備校でも成績が上がるまで時間のかかる科目ですが、時間をかけて得意科目にすると忘却しにくくなり、周囲に差をつけることができます。

一方で勉強法は比較的単純であり、取引と仕訳の意味を理解して、問題集を解く作業の繰り返しです。分野によって理解しにくい論点は出てきますが、勉強法そのものは早い段階で決着がつくことでしょう。

論文試験では正解と不正解がはっきりと分かれるため得点に差が付きやすく、かつては簿記を制する者は会計士試験を制すると言われました。

理論(財表)

こちらは計算ほどボリュームは多くないですが、他の理論科目と比べるとそれなりにボリュームはある科目です。計算と理論をセットで理解するようにすると効率よく進んでいきます。

短答試験では細かい知識を問う問題も出題されますが、知らない問題は既存の知識から推測して解答するほかないです。また、論文試験では分からない問題を完答できなくても考えて書けば部分点を取れる可能性があるため、基礎的な考え方を理解しておくことが重要となります。

また、財務会計は外部報告用の計算であるという性質上、制度改正の影響を受けて毎年のように変更点が出てきます。そのため、計算・理論ともに最新年度の教材を使うべきですし、改正点は計算方法・改正の背景を理解しておいた方がよいでしょう。

全般的な勉強法

さて、科目特性を踏まえて、以下の作戦で勉強を進めていきました。

簿記2級のすすめ

会計の分野に適性や興味があるかどうかを測定する試金石として、いきなり公認会計士講座を申し込むのではなく、まず簿記3級、簿記2級まであらかじめ受験しておきました。結果、1回で合格して、勉強自体も面白いと思えたため、公認会計士講座にステップアップしました。

要した時間は簿記3級合格まで50時間くらい、簿記2級合格まで200時間くらいであったと思います。

なお、簿記1級まで事前に取っておく必要はないです。それなりに時間がかかりますし、適性や興味を測定する趣旨ならば簿記2級まででよいと思います。

基礎期は先回り

TACの講座を取っていたのですが、最初の3か月は講義の進行とは関係なく、簿記・管理会計の計算問題を毎日10時間ひたすら解いていました。計算科目を早い段階で仕上げておく必要があると考えたためです。テキストの例題・個別問題集を回して解きました。

一方、勉強が進むににつれて理論の比率を高めていきました。理論はテキストを読んで理解することが最優先です。最初は読んでも理解しにくいところもあるのですが、気にせず読み進めます。あとから理解がつながってきます。1日2時間のペースで半年くらいかかりました。

TACからは「予習は不要」と言われていましたが、先回りしたメリットは大きいと判断したため、どんどん先に進み、講義は復習用として聴いていました。

二段階マーキング

理解スピードをアップするために、テキストを以下の通り塗り分けました。

・テキストに重要と書かれている部分:黄色マーカーでチェック
・自習や講義で重要と思った点:赤マーカーでチェック

すると、赤マーカーと黄色マーカーが重なった部分はオレンジ色になります。この方法を二段階マーキングと呼びます。未知の分野の理解を早めるテクニックとして活用していました。

速読

理解がつながってきたあとは、理論テキストを速読することを日課にしました。

速読は特にトレーニングをしたわけではないので、誰にでも応用できるかどうかはわかりません。30分で1冊読みきるくらいの速度でテキストを読みます。

イメージするならば、初対面の人の顔を1秒見ただけでは何も連想しないのに対して、古くからの友人の顔を1秒見ただけで色んな思い出が蘇ってくることを想像してみてください。

論点も一緒です。初見の論点が書かれたページを1秒眺めただけでは何も理解できませんが、繰り返し読んで理解した論点が書かれたページを1秒眺めただけでも関連する知識が蘇ってきます。このように速読は、知識の忘却防止と、理解が不充分な場所の特定に有用であったため、日課となっていました。

なお、他の理論科目でも同様に速読を行っていました。会計士試験は試験範囲が広いため、いかに省力化するかがポイントとなります。1日30分の速読で知識を維持しつつ、浮いた時間を理解していない論点に投入するなり、計算科目に投入するなりすればよいわけです。

例えば簡単なモデルとして、300ページのテキストを何度も読んで学習することを考えてみます。

1ページあたり1分で熟読すると、5時間で通読することができます。20回繰り返すと、合計必要時間は100時間です。

ここで、速読を導入するとこうなります。

1周目:テキストのゴシック部分とか下線部分に黄色のマーカーで線を引く。勉強と言うより作業に近い。講義がある場合は予習として講義前に済ませておく。5時間
2周目:普通に熟読。講義がある場合はここで受ける。自分で重要と思った部分&講師が指示した部分に赤色のマーカーを引く。必要に応じてメモも書き込む。10時間
3周目:マーカー部分を中心に読む。もう分かる部分は飛ばす。4時間
4周目:同様。徐々に熟読から速読に移行。3時間
5周目:同様。2時間
6周目~20周目:30分

合計31.5時間で20回読めます。

速読法といいつつ、最大のポイントは2周目までにテキストを加工し、書かれている内容を(忘れても良いので)可能な限り理解しておくことです。

すると、3周目以降は「理解」よりも「確認」の要素が多くなり、大幅に時間を削減できます。6週目以降は30分ですから、300ページのテキストを毎日通読することも可能になります。

記憶を維持する観点からも「たまにまとめて学習するが、普段はほったらかし」よりも「30分でもいいから毎日学習する」方が好ましいように思います。

アウトプット重視

計算はテキストを読むことよりも、とにかく問題を解くことを心掛けました。また、例題のような個別問題を重視して、総合問題を解きすぎないようにしました。例題をきっちりと解けるようになっておけば本試験でも戦えます。

計算の総合問題を解いていて間違えた分野は、原則として例題をすべて解き直します。

例えば個別論点の総合問題を解いていて有価証券の売却益を間違えた場合には、まず間違えた原因を特定します。そして間違えた原因が仕訳の理解不足であった場合は、次の総合問題を解くのが遅れても構わないので、テキストの有価証券の例題をすべて解き直します。結果として、苦手な分野ほど繰り返し例題を解くことになるため、弱点がどんどん補強されていきます。

繰り返しになりますが、出題可能性の高い分野の例題を全部解けるようにするのが合格への近道です。

理論もテキストを読むだけでは理解が進まないので、アウトプットを織り交ぜます。試験の過去問や答練で同じ分野からの出題を確認して、出題箇所をテキストに書き込んでいきます。

すると、よく出題される点はテキストが書き込みで真っ黒になっていくのに対して、あまり出題されない分野は書き込みも少なく空白が大きくなります。速読による復習の際に大きな効果を発揮します。

短答対策

短答・論文共通の話は以上になります。次に短答特有の対策について書いてみます。

事前対策

短答対策としては短答形式の問題を26穴バインダーに綴じて、グルグルと回転しました。重視した点は以下の通りです。

・問題ごとに解くのではなく、肢ごとに正誤を判定すること
・当て勘ではなく、正誤の根拠を言えるようにすること
・出題された点をテキストに書き込むこと

短答答練をグルグル回して解く+テキストを読んで理解&暗記する

というのがやっぱり王道なんだろうと思います。

なお、26穴バインダーは「セプトクルール」を使っていました。色が7種類あり、ちょうど公認会計士試験の科目数と同じですので、科目別に色を分けて整理することができるため、重宝していました。

また、26穴の穴あけパンチは「ゲージパンチ・ネオ」を使いました。耐久性に優れます。ただ1つだけ欠点があり、穴をあけるときに結構大きな音がしてうるさいため、自習室ではなく自宅で穴をあけることをおすすめします!

補足:バインダーは26穴のものを使うことを強くおすすめします。2穴のバインダーは紙がすぐに破れてしまい、教材が散乱するリスクが高いため、おすすめしません。

計算・理論ともに、TAC出版で市販しているベーシック問題集も使用しました。

直前対策

直前期は根性型の勉強はやめて、コンディショニング作りを最優先にするため、勉強時間は多くても1日10時間に抑えました。新しいところをやるよりも、既存の知識のチェック!時間配分や「切る」ことも考えつつ、作戦を組みます。

以下の内容は、2009年5月の短答前に作ったメモです。内容的には古いですが、重要なことは本試験でどのような戦術を取るか、自分の得意不得意にあわせて事前に決めておくことです。

◎簿記
<大前提>
・まず理論を先に終わらせ、残り時間で計算を解く。
・解く順番は難易度と所要時間からあたりをつけ、その場で柔軟に判断すること。
・問題文の解答要求に必ず丸をつける。
・税効果の有無、期末為替レートも確認して丸をつける。
・切る問題は選択肢を眺めて「多数派に従う」。
・最後の1分まで粘る!

<各論>
・BM1、2、4の範囲が出たら全部解く。
→得点源なので全範囲を軽く復習。結局、頼りになるのは網羅性。
・特商は解く。但し、商品が4種類以上の場合は後回し。
・本支店(在外支店の換算含む)は解く。但し、未達がある場合は後回し。
・帳簿組織は二重仕訳控除or伝票会計なら解く、それ以外は切る。
・個別c/sは解く。連結c/sは切る。
・製造業、建設業、本社工場は後回し。
・企業結合は解く。(持分プーリング法も一応知っておく)
・連結・持分法はBMの範囲であれば解く。明らかに上級論点が含まれるものは切る。

・1株あたり情報は超簡単なものだけ解く。潜在株式調整が必要なら切る。
・リース、退職給付、外貨、減損、有価証券等の上級論点は解く。
・デリバティブ、ヘッジ会計はその場で合理的に考えて解く。でもスワップ取引はよく分からんので切る。
・ストックオプション、中間・四半期財務諸表、そのほかよく分からん問題は切る。
・もし総合問題が2008年短答と同じ3点×6問の形式であれば、15分以内で可能な限り解答する。

◎財表
・分野にかかわらず、できるところから解く。
・問題文の解答要求に必ず丸をつける。「正しいもの」or「誤っているもの」を間違えると死ぬ!
・正答が導けなくとも、確率を上げるべく5択を4択・3択・2択に絞る努力をする。
・分からないときは合理的に考える。
・それでも分からないときは「必ず」「例外なく」「どのような場合でも」などのフレーズが出たら×、「~といわれることがある」「~の場合もある」が出たら○とする。
・知識問題は知らなければ長考しても解けないものは解けない。さっさと見切りをつけて計算に移ること。

難易度にもよるが、6割確保できればよいと開き直る。

論文対策

続いて、論文特有の対策について書いていきます。

計算をやりすぎない

計算は範囲が膨大ですが、マイナー論点までやりこむのは時間対効果が低いと判断したため、時間を割きすぎないことを気をつけました。上級期の学習量比率は計算20%くらい、理論15%くらいであったと思います。連結・組織再編の計算は注力しましたが、他分野の計算演習はやりすぎないようにして、他科目に時間を配分しました。

理論対策は2本立て

TACの理論テキストには、論点ごとの重要性に応じてA、B、C、無印の4段階が設定されていました。

理論問題については、以下の2つのアプローチを意識しました。

◎知っている論点(=出たら高得点が取れる論点)を増やすアプローチ
→そのためには、A論点&B論点をひたすら理解・暗記

◎知らない論点でも何とか粘って1点でも取れるようにするアプローチ
→そのためには、横断的理解、テクニック

論点をつぶす

そこで、A論点から順につぶしていきました。ここで「論点をつぶす」とは、出題されたら満点とはいかないまでも合格点が取れる答案を書ける状態にすることを意味します。

・A論点はしっかり書けるくらい暗記する。
・B論点はそれなりに書けるようにする。
・C論点は一応知っておく。
・無印は参考程度、特段の論文対策は行わない。

理解と暗記は、問題解いてテキスト読めばいいだけです。ボリュームは多いですが。

横断的理解

テキストに横串をさすイメージですね。具体的には、テキストを通読して、あるキーワードがどことどこに使われているかを拾っていく勉強法です。たとえば…

「比較可能性」
「コンバージェンス」
「リスクからの解放」
「収益費用アプローチ」「資産負債アプローチ」
「投資の継続」「投資の清算」

あたりは調べました。こうやって横断的な理解ができるようになると、未知の問題にも推測が働いて答案が書ける例が出てきます。

テクニック

知らない論点が出題されて、かつ、横断的な理解によっても手がかりがつかめない場合。白紙だと0点しか有り得ないので、何かしら書く必要性が出てきます。かする可能性のある表現を考えてメモしておきました。

「財務諸表利用者に有用な情報を提供するため」
「比較可能性を確保するため」
「損失の繰延を防止するため」
「費用と収益の対応を図るため」
「XXという経済的実態を財務諸表に反映させるため」
「XXの会計処理との整合性を図るため」
「会計基準のコンバージェンスを図るため」
「経営者の恣意性を排除するため」
「投資は継続(清算)していると考えられる」
「時価評価にあたって事業遂行上等の制約がない(ある)」
「一連の取引とみるのか、別個の取引とみるのか」
「投資のリスクから解放されたといえる(いえない)」

1点くらい来るかもしれませんよ?それっぽい表現を何か書いてみる。現実的な話、このくらいしか対抗策がないような気がします。

たまに「分からない問題でもその場で考えれば分かるじゃん」と言われますが、一部の天才受験生の芸当のような気がしてなりません。笑


以上が財務会計論の勉強法でした。

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