当記事では、公認会計士試験の租税法の勉強法について書いていきます。あくまで2011年合格者の一例として捉えていただければと思います。
全体的な勉強法については、公認会計士試験合格体験記の総論の記事をご覧ください。

租税法の科目概要
租税法は短答試験では出題されません。論文試験では100点/700点を占める科目です。また、試験範囲が広く、多くの勉強時間を取られる科目です。
租税法は計算と理論があり、本試験では分かれて出題されます。また、税目としては法人税の割合が最も大きく、次いで消費税、所得税の順となっています。
租税法の科目特性
科目ごとの特性を知っておきましょう。
計算
租税法の計算はボリュームが多く、かつ法人税・消費税・所得税という3つの税目に対応する必要があるため、合格水準に達するまで長い時間を要します。特に勉強の初期は計算科目の中でも忘却率が高く、コツをつかむまでは覚えては忘れることの繰り返しです。逆に、いったん体系的な理解が固まると忘却率が低くなります。
一方で勉強法は比較的単純であり、取引と調整の意味を理解して、問題集を解く作業の繰り返しです。分野によって理解しにくい論点は出てきますが、勉強法そのものは早い段階で決着がつくことでしょう。
また、租税法は短答で出題されないため、論文受験生内で実力差が大きいのも特徴です。短答合格まで租税法にまったく触れていない場合、上位層に追いつくためには相当な時間の投入が必要となります。
理論
租税法の理論は計算ほどボリュームは多くなく、他の理論科目と比べてもボリュームは控えめです。
論文試験では予備校のテキストに載っていない判例などが出題されるケースはあるものの、分からない問題を完答できなくても考えて書けば部分点を取れる可能性があるため、基礎的な考え方を理解しておくことが重要となります。
全般的な勉強法
さて、科目特性を踏まえて、以下の作戦で勉強を進めていきました。
法人税・所得税・消費税の学習量比率
租税法は法人税・所得税・消費税の3つの税目から構成されますが、法人税が圧倒的にボリュームが多く、最大のヤマです。
法人税70%、消費税20%、所得税10%くらいの時間配分で学習しました。
攻めの科目
租税法は問題数が多く、かつ、各問題が独立であるため、リスク分散効果が働きます。
例えば、
・理論でミスしても計算に影響なし(逆も同様)
・法人税の計算でミスしても消費税の計算に影響なし(逆も同様)
さらに、法人税の計算であれば、
・減価償却でミスしても貸倒引当金は正答可能(逆も同様)
・繰延資産でミスしても租税公課は正答可能(逆も同様)
減価償却で1個ミスしても、1~2失点で済みますね。もちろん例外もあり、圧縮記帳でミスすると減価償却も連鎖してミスしますが、こういった論点は少数です。
このように各論点が独立しており、1つのミスが大量失点につながる可能性が低いため、本番では思い切って攻める科目にすることが可能です。
また同様の理由で、苦手論点を少々切ったとしても致命傷になる確率は比較的低いです。
以上より、時間の許す限り、租税法を得意科目に仕上げる戦略が良いと思います。
アウトプット重視、例題重視
計算はテキストを読むことよりも、とにかく問題を解くことを心掛けました。また、例題のような個別問題を重視して、総合問題を解きすぎないようにしました。例題をきっちりと解けるようになっておけば本試験でも戦えます。
計算の総合問題を解いていて間違えた分野は、原則として例題をすべて解き直します。
例えば法人税の総合問題を解いていて減価償却費の別表4の調整を間違えた場合には、まず間違えた原因を特定します。そして間違えた原因が調整方法の理解が不充分であった場合は、次の総合問題を解くのが遅れても構わないので、テキストの減価償却の例題をすべて解き直します。結果として、苦手な分野ほど繰り返し例題を解くことになるため、弱点がどんどん補強されていきます。
序盤は計算を集中的に攻める
租税法の計算は、簿記や管理会計と比べて忘れやすいです。例題を解いてもどんどん忘れていきます。
そのため、特に学習初期はまとまった時間を投入して一気に攻めました。忘れる速度よりも速いペースでインプットし続けることで、全体像を把握していきました。
計算中心に稼げるようになると、大崩れはしなくなります。
2年目である2010年に実践したのは以下の通りです。
・テキストの例題を解きまくり、計算パターンをインプットしました。
・上級問題集は法人税&消費税は3周回しました。
・アクセス・答練も、法人税・消費税の計算問題は3~4周回しました。
・総合問題でミスした部分は、テキストに戻り、ミスした分野の例題を全部解きなおしました。
・理論は、理論テキストを1週間で1周くらいのペースで読みました。
こんな感じでやったら、全答練2回目ではA判定が出ましたが、2010年の論文本試験で得点比率49くらいでした。
得点比率が伸びなかった理由は、所得税の計算をほぼ切っていたからと、全答練2回目でA判定が出たからといって安心して学習量を減らしすぎたからだと思われます。
後半は総合問題でメンテナンス
全体像を把握したあとは、「アクセス&答練をガンガン解く→ミスった部分はテキストに戻って再確認」ひたすらこれの繰り返しです。
合格した年度は、だいたい1週間あたり法人税の総合問題3~5問、消費税の総合問題2~3問くらいのペースで解きました。ミスをしてテキストに戻った際は、単に読むだけでなく、原則としてその章のすべての例題を解きなおします。とはいえ、受験3年目になると例題に戻ってもなお、総合問題を回す余裕も出てきました。
所得税はそもそも総合問題が少なかったため、個別問題中心で済ませました。
半解きをしてもよい
租税法の計算問題は計算パターンを暗記すれば対応できるものが多いため、管理会計のような「半解き」はしませんでした。
とはいえ、半解きは計算科目の勉強法として効率的ですので、租税法で実行してみてもよいと思います。具体的な方法論については管理会計の記事をご覧ください。
理論はテキストとアウトプット
理論もテキストを読むだけでは理解が進まないので、アウトプットを織り交ぜます。試験の過去問や答練で同じ分野からの出題を確認して、出題箇所をテキストに書き込んでいきます。
すると、よく出題される点はテキストが書き込みで真っ黒になっていくのに対して、あまり出題されない分野は書き込みも少なく空白が大きくなります。速読による復習の際に大きな効果を発揮します。
理論のキーワードは課税の公平です。知らない問題が出たら、何とか書いてみるほかないでしょう。
本試験の解く順序
租税法の解く順序・時間配分について、当時やっていた方法を書いてみます。
もちろん、問題の難易度やボリュームによってある程度のズレは生じますので、あくまで目安です。
<原則>
消費税計算 15~20分
↓
所得税計算&法人税計算(個別問題) 5~10分
↓
法人税計算(総合問題) 40分
↓
理論 45分
(予備 10分)
<例外>※
消費税計算 15~20分
↓
所得税計算&法人税計算(個別問題) 5~10分
↓
理論 45分
↓
法人税計算(総合問題) 40分
(予備 10分)
※例外を適用する場合
法人税計算(総合問題)が、計算課程も全部答案に書かせるタイプの場合。
(例:2006年論文本試験など)
以上が租税法の勉強法でした。
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ではでは。